いつか幸せになりたい・・・こんなセリフは誰もがたやすく口にします。でも、そう言ってしまった途端に、今の自分の幸せが見えなくなるような気もします。家族が好き、自分が好き、生きていることが好き・・・だとしたら、子供としてそれ以上の幸せはないのではないでしょうか。しかし、現代は、人と人との絆を結ぶことが難しい、また、それを保つことの難しい時代です。そういう『関係』を希薄にしか感じられない、そんな状況では、家族という絆さえ、単純には信じられなくなるのでは、という不安がよぎります。
ところで、子供にとって、親の仕事とはなんでしょうか。子供は親の仕事を通して何を見、何を学ぶのでしょうか。『父親の権威失墜』などと軽々しく言われますが、それを許す原因は何なのでしょうか。『仕事』が、単に経済的に家族の生活を支えるためだけのものではなく、人間として「いかに生きるか」でもあることを、子供はいつ、どうやって学ぶのでしょうか。と同時に、我々は大人として、親として、それを忘れてはいないでしょうか。さらに、それを子供たちに教えることを怠ってはいないでしょうか。
今、抱いている「悩み」についてきいてみると、子供たちの多くが、「自分の将来・職業」だと答えます。子供たちが、人と人との絆に支えられながら、常にそこに希望を見いだしてほしいとの願いをこめて、この作品を制作致しました。
また、この『パパはマジシャン』では、マジシャン役の二人がプロのマジシャンに師事し、芝居と同時に、本格的なマジックの数々をご披露いたします
パパはマジシャン!腕も一流!でも、ちっとも仕事が来ない。どうしてかしら? 不景気のせい? 多分ね。でも、それだけじゃないと思う。だって、お仕事大好きなはずなのに、パパったら、なぜかまるでステージに出たくないみたいなんだもの。
実は私、小さい時から目の病気で、今は何も見えないけれど、いつか手術をして、見えるようになったら、一番最初にパパのマジックを見せてもらう約束なの。だから、私、思い切って、幼なじみのダニエルと一緒に、パパがずっと前、ショーに出ていたホテルの劇場へ行って、支配人に直接会ってみることにした。『パパは、マジックをやめてしまったんでしょうか?』
そしたら、そこへパパのライバルだったマジシャン、メアリーがやってきて、大変なことがわかったの。その上、どういうわけだかババとメアリーがマジック対決をすることになっちゃって・・・でも、それはパパにとってはチャンスだわ!
いよいよ、マジック対決の日!パパ、やっとヤル気になったのに、信じられないことが起きたの。
マジックの最中、突然パパが倒れた・・・ 『パパ、このままじゃメアリーさんに負けちゃうわ!』
皆、パパは病気なんだっていうけれど・・・ううん、これは事件よ!なんだかメアリーさんがあやしいわ!でも、だからといって、なにをどう証明したらいいの?この私になにができるの?
とにかく、ババにもう一度お仕事が来るように、私、がんぱる!
是非、観劇前、あるいは観劇後、生徒のみなさんには、先生やご家族、身近にいらっしゃる大人の方に、どうしてその仕事を選んだのか、そして、どんなお仕事なのか具体的な内容などを、是非聞いてみて頂きたいと思います。そしてそこから、自分自身の将来の夢や目標、実際の職業について、あらためて語り合う機会にして頂ければと願っています。
<作品情報>
・作/村田里絵
・演出/平塚仁郎
・上演時間/約105分(休憩10分)
・対象/小学生
目がみえないのにパトリシアが元気で可愛かった。パトリシアのおばさんが優しくて大好き。
1年生女子
マジックが面白かった。いつも「あーのね」っていう人が好きだった。マジック対決でみんな最後まで頑張れてよかった。
1年生男子
マジックが本格的で凄かったです。生徒たちは勿論、大人もとても楽しめました。笑いと涙と、仕事とは何かを考えさせられました。
家族愛のある温かい良い劇でした。マジシャンのメアリーさんと付き人のやり取りが抜群に面白かった!また、初めて間近で大がかりなマジックを見ることができてびっくりしました。タネも仕掛けもあるはずなのに、どうなっているのか分からず、さすがにプロだと思いました。
深刻な内容であるにもかかわらず、主人公の明るく前向きな演技、悪役の面白さで困難なことがあっても乗り越えて行こうと勇気付けられる作品だと思いました。